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初心者でもわかる!ソロモン72柱!

ゲーム制作でアイテム名やモンスター名に困ったときはコレ

ゲームやアニメをやっていると、ふとした拍子に「ソロモン72柱」や「ゴエティア」という言葉に出くわします。ラスボスの名前だったり、ソシャゲのタイトルそのものだったり、悪魔キャラの肩書きだったり。私も最初は「72柱って何? そんなにたくさん悪魔がいるの?」と、頭の上に大きな「?」が浮かんだクチでした。でも一度その正体を知ると、いろんな作品に散らばっていた悪魔たちが一本の線でつながって、急に世界が広く見えてきます。この記事では、ソロモン72柱とはそもそも何なのか、72体すべてはどんな顔ぶれなのか、そしてなぜゲームの世界でこんなにも愛されているのかを、初心者向けにやさしくほどいていきます。

ポイント3行

  • ソロモン72柱とは、17世紀の魔術書に「ソロモン王が使役したとされる72体の悪魔」として書き留められた、いわば伝承・物語の中の存在
  • 一体ずつに王や公爵といった位階、率いる軍団の数、固有の姿や能力が細かく設定されていて、これがゲームやアニメで大人気の理由
  • 「全員が襲ってくる悪役」というイメージは実は誤解で、学問や芸術を教えてくれる“知識の番人”のような悪魔がたくさんいる

まずは大前提:これは「本に書かれた物語」の話

中身に入る前に、いちばん大事なことを先に伝えておきます。ソロモン72柱の話には、性質のちがう二つの層がある、ということです。ここを分けて読むのが、誤解せずに楽しむコツです。

ひとつは、魔術書がこう語っている、という「物語・設定」の層。悪魔の姿、能力、位階、率いる軍団の数、そしてソロモン王が彼らを従えたという逸話。これらはすべて「古い本にこう書いてある」という枠の中の話です。悪魔が実際にいるかどうかの前に、まず「昔の人がこう想像し、こう書き残した」という文化の記録として受け止めるのがちょうどいい距離感です。

もうひとつは、その本がいつ、どこで、何を下敷きにして書かれたか、という「歴史」の層。こちらは研究によって、わりとはっきり分かっています。何世紀に編まれ、どんな先行資料を参考にしたか、といった話です。

なので私はこの記事を、悪魔の姿や能力は「魔術書ではこう書かれている」、成り立ちは「歴史的にはこうらしい」と、はっきり分けて書いていきます。72柱は、当時の人々の想像力と信仰が生み出した、いわば文化遺産。そう思って読むと、こわいだけのものではなく、すごく面白い読み物に見えてきます。

そもそも「ソロモン72柱」とは何か

「ソロモン72柱」は、正確には『ゴエティア』という書物に出てくる72体の悪魔のことを指します。このゴエティアは、単体の本ではなく、『レメゲトン』、日本語で言うと『ソロモンの小さな鍵』という魔術書の一部です。レメゲトンは全部で五つの書から成る、いわば五巻セットの魔術指南書で、その第一巻がゴエティアにあたります。

五つの書の内容は、実はかなり性格がちがいます。整理すると、こんな構成です。

書の名前 何を扱う巻か
アルス・ゴエティア 72柱の悪魔。今回の主役はここ
アルス・テウルギア・ゴエティア 方位を司る、善悪入り混じった霊たち
アルス・パウリナ 時間や星に対応する天使
アルス・アルマデル より高位の天使的な存在
アルス・ノトリア 記憶力や学問を授けてもらうための祈り

こうして並べてみると、「悪魔の本」というイメージが当てはまるのは、実は最初のゴエティアだけだと分かります。後半の巻はむしろ天使や神聖な知識を扱っていて、おどろおどろしい雰囲気とはずいぶん毛色がちがうのです。ソロモン72柱と聞いて思い浮かべる悪魔たちは、この五巻のうちの一巻に詰め込まれた顔ぶれ、というわけです。

では、なぜ「ソロモン」の名がついているのか。それは旧約聖書にも登場する、古代イスラエルの知恵の王ソロモンの伝説に由来します。伝承では、ソロモン王は神から特別な指輪を授かり、その力で天使も悪魔もふくめたあらゆる霊を意のままに使役できたとされます。この指輪は「ソロモンの封印」と呼ばれ、王はそれを使って72体の悪魔を働かせ、エルサレムの壮大な神殿を建てさせた、と語り継がれてきました。つまりゴエティアは、「あの偉大なソロモン王が悪魔を従えた、その秘伝の書である」という看板を掲げた本なのです。

真鍮の壺の物語:72柱はこうして世に放たれた

ソロモン72柱を語るうえで、ぜひ知っておきたい有名な逸話があります。「真鍮の壺」の物語です。

伝説によると、神殿を建て終えたソロモン王は、悪魔たちのあまりの尊大さと危うさを警戒しました。そこで72柱すべてを大きな真鍮の壺に封じ込め、秘密の印で固く封をして、バビロニアの深い湖の底へ沈めてしまいます。これで一件落着、のはずでした。

ところが時が流れ、バビロニアの人々がこの壺を発見します。彼らは「こんなに厳重に封じてあるのだから、さぞかし財宝が詰まっているにちがいない」と期待し、わくわくしながら封を解きました。中から飛び出してきたのは、もちろん財宝ではなく、閉じ込められていた悪魔たちです。72柱のうち71柱は一目散に逃げ出し、それぞれの居場所へ戻っていきました。そしてただ一柱、ベリアルという悪魔だけがその場に残り、人々の前で神託を語る存在になった、と伝えられます。

宝箱だと思って開けたら災いが飛び出してきた――どこかギリシャ神話のパンドラの箱を思わせる物語ですよね。こうした筋書きの良さも、ソロモン72柱が長く語り継がれ、創作の題材に選ばれ続けてきた理由のひとつなのだと思います。

72柱には「位階」と「軍団」がある

ソロモン72柱の最大の特徴は、ただ72体の悪魔がずらりと並んでいるだけではない、という点です。一体ずつに、人間の貴族社会のような「位階」と、率いている「軍団」の数が、きっちり設定されているのです。まるで悪魔界の組織図のようで、ここがたまらなく面白いところです。

位階は、大きく七種類に分かれます。

位階 ざっくりした立ち位置 対応するとされる天体
最上位に立つ支配者 太陽
公爵 王に次ぐ大物 金星
君主 高貴な指揮官 木星
侯爵 軍団を率いる貴族
伯爵 領地を治める貴族 火星
総裁 とりまとめ役 水星
騎士 たった一体だけの位 土星

それぞれの悪魔は、この位階のどれかを持ち、さらに数十から数百という規模の「軍団」を率いているとされます。たとえば筆頭のバエルは66の軍団を、パイモンという王にいたっては200もの軍団を従えている、という具合です。位階が天体と結びつけられているのも風変わりで、ただ一体しかいない騎士の位は土星に対応する、といった凝った設定まで用意されています。

おもしろいのは、この「騎士はたった一体だけ」という細部です。72柱のなかで騎士の位を持つのはフルカスという悪魔ただ一人で、ほかの位階が複数いるなかで、騎士だけが孤高の存在になっています。ざっくりとした内訳でいうと、いちばん多いのが公爵で20体あまり、総裁・侯爵・伯爵もそれぞれ十数体ずつ、王が9体、君主が7体、そして騎士はただ1体です。ただし、なかには「王であり伯爵でもある」「総裁でもあり伯爵でもある」と二つの位を兼ねる悪魔が8体ほどいるので、数え方によって人数は少し前後します。

人間さながらの身分制度があり、それぞれが軍団を抱えている――この“設定の作り込みの細かさ”こそ、後でお話しするゲームやアニメでの大活躍につながっていきます。

72柱を全員紹介!

お待たせしました。ここからは第1柱から第72柱まで、全員を順番に紹介していきます。「序数」はゴエティアに書かれている並び順の番号で、これは強さの順位ではありません。お気に入りの一体を、ぜひ探してみてください。

ひとつ先に断っておくと、率いる軍団の数や細かな姿は、写本(手書きで伝わった本の写し)によって少しずつ食い違います。なのでここでは、いちばんよく知られている能力と姿をぎゅっと一言にまとめました。

第1柱〜第24柱

序数 名前 位階 何をする悪魔か
第1柱 バエル 姿を消す力を授ける、72柱の筆頭。蛙・人・猫の三つの頭で描かれる
第2柱 アガレス 公爵 あらゆる言語を教え、逃げた者を呼び戻す。ワニにまたがる老人の姿
第3柱 ウァサゴ 君主 過去と未来を語り、失せ物や隠し事を見つける温和な霊
第4柱 ガミジン 侯爵 学問を教え、亡くなった者や海で死んだ者の魂について語る
第5柱 マルバス 総裁 隠された事柄に正しく答え、病気を治しもし、また与えもする。獅子の姿
第6柱 ウァレフォル 公爵 盗みをそそのかし、盗っ人どうしを結びつける
第7柱 アモン 侯爵 過去と未来を見通し、争いを起こしも仲直りもさせる
第8柱 バルバトス 公爵 獣や鳥の言葉を理解させ、隠された宝のありかを教える
第9柱 パイモン あらゆる学問・哲学・科学を教える。ラクダに乗り、楽の音を従えて現れる
第10柱 ブエル 総裁 自然学や道徳を教え、病をいやす
第11柱 グシオン 公爵 過去現在未来を語り、仲たがいした友を仲直りさせる
第12柱 シトリー 君主 男女のあいだに熱烈な愛を生み出す
第13柱 ベレト 男女の愛を生み出す。軍馬に乗り、音楽に先導されて現れる
第14柱 レラジェ 侯爵 争いを引き起こし、矢の傷を悪化させる。緑衣の弓使いの姿
第15柱 エリゴス 公爵 隠された物事を見つけ、戦の行方を見通す。槍を持つ騎士の姿
第16柱 ゼパル 公爵 女性に男への愛を抱かせる
第17柱 ボティス 総裁にして伯爵 過去と未来を語り、敵対する者どうしを和解させる
第18柱 バティン 公爵 薬草や宝石の力を教え、人を遠い土地へ瞬時に運ぶ
第19柱 サレオス 公爵 男女に愛を芽生えさせる。ワニに乗る気品ある兵士の姿
第20柱 プルソン 隠された宝を見つけ、過去現在未来を明かす。熊にまたがる獅子顔の男
第21柱 モラクス 伯爵にして総裁 天文学や学問を教え、有能な手下を与える。人面の牡牛の姿
第22柱 イポス 伯爵にして君主 あらゆる物事を見通し、人を才知と勇気に富ませる
第23柱 アイム 公爵 火を放ち、人を機知に富ませる。蛇・人・猫の三つの頭を持つ
第24柱 ナベリウス 侯爵 弁論や学術にたけさせ、失った地位を取り戻させる

第25柱〜第48柱

序数 名前 位階 何をする悪魔か
第25柱 グラシャ=ラボラス 総裁にして伯爵 学術を教えるが、流血や殺生をそそのかすともされる。翼を持つ犬の姿
第26柱 ブネ 公爵 亡き者を別の場所へ移し、人を雄弁で賢く、豊かにする。三つ首の竜の姿
第27柱 ロノウェ 侯爵 弁論術と諸言語を教え、忠実な召使いを与える
第28柱 ベリト 公爵 過去現在未来を語り、あらゆる金属を黄金に変える。赤い装いの兵士の姿
第29柱 アスタロト 公爵 過去現在未来を語り、学問を教え、隠された宝へ導く。竜にまたがり蛇を手にする
第30柱 フォルネウス 侯爵 弁論術や言語を教え、よい評判を授ける。海の怪物の姿
第31柱 フォラス 総裁 薬草や宝石の力を教え、失せ物を見つけ、人を機知と長寿に恵む
第32柱 アスモデウス 隠し財宝のありかや諸学を教える。牛・人・羊の三つ首に蛇の尾を持つ
第33柱 ガープ 総裁にして君主 哲学や学問を教え、愛憎を操り、人を見えなくする
第34柱 フルフル 伯爵 男女の愛を生み、雷や嵐を呼ぶ。炎の尾を持つ鹿の姿
第35柱 マルコシアス 侯爵 頼れる強い戦士で、問いに正しく答える。翼ある狼の姿
第36柱 ストラス 君主 天文学と、薬草や宝石の力を教える。大きなカラスの姿で現れる
第37柱 フェニックス 侯爵 詩才にすぐれ学問を教える。美しい声を持ち、千二百年後に天へ帰ることを願う
第38柱 ハルファス 伯爵 塔を築いて武器を満たし、兵を戦地へ送り出す。コウノトリの姿
第39柱 マルファス 総裁 家や塔を建て、有能な手下を与える。カラスの姿で現れる
第40柱 ラウム 伯爵 宝を盗み出し、街を滅ぼし、過去現在未来を明かす
第41柱 フォカロル 公爵 風と海を操り、船を沈める力を持つ。翼を持つ人の姿
第42柱 ウェパル 公爵 海を導き、また荒らす。人を傷の腐敗で死なせる。人魚の姿
第43柱 サブナック 侯爵 塔や城を築き、武器を与え、傷を腐らせる。獅子頭の兵士の姿
第44柱 シャックス 侯爵 視力・聴力・理解力を奪い、金品や馬を盗む。コウノトリの姿
第45柱 ヴィネ 王にして伯爵 隠れた者や魔女を暴き、嵐を起こし、塔を建て壁を崩す
第46柱 ビフロンス 伯爵 占星術や学問を教え、亡き者を移し、墓にともしびをともす
第47柱 ウヴァル 公爵 女性の愛を授け、味方も敵も友に変える。ラクダから人へ姿を変える
第48柱 ハーゲンティ 総裁 人を賢くし、金属を黄金に、水をぶどう酒に変える

第49柱〜第72柱

序数 名前 位階 何をする悪魔か
第49柱 クロケル 公爵 幾何学を教え、水を温め、隠れた水場を示す。天使の姿で語る
第50柱 フルカス 騎士 哲学・天文学・弁論術などを教える、72柱でただ一人の騎士。白髪白髭の老人の姿
第51柱 バラム 過去現在未来に正しく答え、人を見えなくし、機知に富ませる。三つ首に燃える目を持つ
第52柱 アロケル 公爵 天文学や学問を教え、有能な手下を与える。獅子顔の騎士の姿
第53柱 カイム 総裁 鳥や獣、水の音の意味を理解させ、未来を正しく告げる
第54柱 ムルムル 公爵にして伯爵 哲学を教え、亡き者の魂を呼んで問いに答えさせる
第55柱 オロバス 君主 過去現在未来に正しく答え、地位と人望を授ける。召喚者に忠実とされる
第56柱 グレモリー 公爵 過去現在未来を語り、老若の女性の愛を取り持つ。ラクダに乗る美女の姿
第57柱 オセ 総裁 人を学問に賢くし、姿を別のものへ変え、思い込みを起こさせる。豹の姿
第58柱 アミー 総裁 占星術や学問にすぐれさせ、有能な手下と宝を授ける。炎の中から現れる
第59柱 オリアス 侯爵 星々の力を教え、人の姿を変え、地位と人望を授ける
第60柱 ウァプラ 公爵 手仕事や学問、技術にたくみにする。翼を持つ獅子の姿
第61柱 ザガン 王にして総裁 水をぶどう酒に、金属を貨幣に変え、愚か者を賢くする。翼ある牡牛の姿
第62柱 ウァラク 総裁 隠された宝を正しく告げ、蛇を呼び出す。竜に乗る幼子の姿
第63柱 アンドラス 侯爵 不和の種をまく。扱いを誤ると召喚者をも害する危険な悪魔。鳥の頭を持つ
第64柱 フラウロス 公爵 問いに正しく答え、敵を炎で滅ぼし、誘惑から守る。豹の姿で現れる
第65柱 アンドレアルフス 侯爵 幾何学や天文学を教え、人を鳥の姿に変える。孔雀の姿
第66柱 キマリス 侯爵 文法・論理・弁論を教え、失せ物や宝を見つける。黒馬に乗る戦士の姿
第67柱 アムドゥスキアス 公爵 姿を見せずに音楽を奏で、木々をしならせる。一角獣の頭を持つ
第68柱 ベリアル 高い地位や有能な手下を授ける。炎の戦車に乗る二人の天使の姿
第69柱 デカラビア 侯爵 薬草や宝石の力を知り、鳥を使い魔として操る。星形で現れ人の姿になる
第70柱 セーレ 君主 どこへでも瞬時に赴き、盗品や隠し財宝を見つける温和な霊。翼ある馬に乗る
第71柱 ダンタリオン 公爵 あらゆる学術を教え、人の心を読んで思いを変える。無数の顔を持ち書物を抱える
第72柱 アンドロマリウス 伯爵 盗まれた品を取り戻し、盗人や悪人を罰し、隠された宝を暴く。大蛇を手にした男

こうして全員を眺めて気づくのは、「襲ってくる」「呪う」といった物騒な悪魔ばかりではない、ということです。学問を教える、宝のありかを示す、失せ物を探す、愛を生む――むしろ召喚した人の願いをかなえてくれる、頼れる相談役のような悪魔がずらりと並んでいます。これは少しあとの「つまずきポイント」で、もう少し詳しくお話しします。

筆頭のバエルの姿について、ひとつ豆知識を。「蛙・人・猫の三つの頭を持ち、蜘蛛のような脚で歩く」というイメージで描かれることが多いのですが、原典のゴエティアに書かれているのは三つの頭までで、蜘蛛の脚は後の時代に別の本の挿絵で足された“盛り付け”だとされています。今ある悪魔のビジュアルが、必ずしも最初からそうだったわけではない、というのも面白いところです。

ここがゲームのアレ! 72柱とサブカルのつながり

さて、ゲーム好きの私がいちばん語りたいのがここです。ソロモン72柱は、日本のゲームやアニメ、ソシャゲの世界で、それはもう驚くほど活躍しています。「あの作品のあれ、72柱だったのか!」という発見が、きっといくつもあるはずです。

まず外せないのが『真・女神転生』『ペルソナ』シリーズ。72柱の多くが、個性的なデザインの悪魔として登場し、主に「堕天使」や「魔王」といった種族に振り分けられています。とりわけ『ペルソナ5』では、敵のボスたちが「七つの大罪」をモチーフに作られていて、物語の最初に立ちはだかる人物の“本性”が、色欲をつかさどる悪魔アスモデウスの姿で現れます。プレイしていて「なんだか神話っぽい名前のボスだな」と感じた人も多いはずですが、その正体が72柱の一員だったわけです。

ソシャゲの世界では、その名もずばり『メギド72』というタイトルがあります。これはもう、ソロモン72柱を世界観の土台そのものに据えた作品です。登場キャラは「祖」と「真」の二系統に分かれていて、「祖」の72体がまさにゴエティアの悪魔をベースにしています。プレイヤー自身がソロモンの立場になって悪魔たちを率いる、という構図は、「ソロモン王が悪魔を使役する」という原典の枠組みを、そのままゲームの仕組みに落とし込んだものなのです。

『フェイト/グランドオーダー』をやっている人なら、第一部の黒幕「冠位の魔神王ゴエティア」を覚えているでしょう。あの存在は、72柱の魔神柱が集まって生まれた巨大な意思として描かれています。物語の根幹に72柱が据えられているわけで、ここでも原典の「ソロモンが生み出した72の魔神」という設定がしっかり活きています。

意外なところでは、アニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』。主役機ガンダム・バルバトスをはじめ、作中のガンダムたちはすべて72柱の悪魔から名前を取っていて、しかも機体の型式番号がゴエティアの序列番号と一致するように作り込まれています。バルバトスは序列8番、グシオンは序列11番、といった具合です。直接悪魔が出てくるわけではないのに、命名のルールとして72柱を採用しているあたり、設定の懐の深さを感じます。

ほかにも、アニメ『青の祓魔師』の上級悪魔アスタロト、漫画『マギ』に登場するダンジョンの主であるジンたちの名前、対戦カードゲーム『シャドウバース』のアスタロト関連のカード、さらにパズル&ドラゴンズをはじめとする数えきれないほどのソシャゲやカードゲームで、72柱の悪魔たちはくり返し採用されています。もはや「高レアな悪魔キャラの名前といえばここから選ぶ」という、業界共通の便利な名前帳のようになっているのです。

では、なぜこれほどまでに創作で重宝されるのか。理由はだいたい四つに整理できます。第一に、72体という豊富なバリエーションがあるので、キャラや敵をいくら量産してもネタが尽きません。第二に、三つの頭を持つバエルや海の怪物のような悪魔など、見た目のモチーフが原典の時点で用意されているので、絵に起こしやすい。第三に、王や公爵といった位階と「率いる軍団の数」がはじめから設定されているので、強さの序列やパワーバランスをそのままゲームの数値設計に流用できる。そして第四に、「召喚して使役する」という枠組みが、プレイヤーが悪魔を仲間にして戦わせる構図とぴったり噛み合う。これだけ“使い勝手のいい素材”はそうそうない、というわけです。

初心者がつまずきやすいポイント

最後に、ソロモン72柱を知ったばかりの人がよく勘違いしやすいところを、まとめて解いておきます。

ひとつめ。「序列の番号は強さの順位ではない」。第1柱のバエルがいちばん強い、というわけではありません。番号はあくまで本に書かれている並び順で、強さランキングではないのです。実際、率いる軍団の数を見ても、第1柱のバエルが66なのに第9柱のパイモンは200と、番号と数はまるで比例していません。

ふたつめ。「数はもともと72ではなかった」。ゴエティアの直接の下敷きになったのは、ヨハン・ヴァイヤーという医師が1577年に発表した悪魔のリストで、こちらは69体でした。その後にまとめられたゴエティアで、ウァサゴ・セーレ・ダンタリオン・アンドロマリウスの4体が新しく加わり、逆にプルフラスという悪魔が1体抜けて、差し引きでちょうど72体になりました。なぜ72という数にこだわったかというと、ユダヤの伝統にある「神の72の名」と数を合わせたかったから、という説があります。

みっつめ。「72柱は全員が堕天使、というわけではない」。落ちぶれた天使という設定がはっきり書かれている悪魔もいますが、72体すべてがそうだと断言されているわけではありません。たとえばフェニックスやマルコシアスという悪魔は、「千二百年たてば天に帰れると願っているが、その望みはかなわない」と物悲しく語られていて、こういう描写を読むと、悪魔というより切ない元・天使に見えてきます。

よっつめ。「名前がよく似ていて混同しやすい」。第1柱のバエルは、もともと古代の中東で崇められていた豊穣の神バアルが、時代とともに悪魔へと“格下げ”された存在です。バアルというのは「主」を意味するごく一般的な言葉だったので、そこから派生した名前がとても多く、蝿の王として知られるベルゼブブなどとよく混同されます。バエルとベルゼブブは語感が似ていますが、ゴエティアの正式な72柱のなかでは、第1柱はあくまでバエルで、ベルゼブブは別格の扱いです。日本語に直すときの「バエル・バアル・バール」といった表記ゆれも、混乱のもとになりがちです。

ついでに、言葉の意味も知っておくと通っぽくなります。「ゴエティア」はギリシャ語に由来する言葉で、もとは「うめき声をあげる呪術」、つまり死者を呼び出すようないかがわしい魔術を指していたとされます。神聖で高尚な魔術と対比される、いわば“裏路地の魔術”というニュアンスを、言葉そのものが最初から背負っているのです。なお、72柱の悪魔を、同じく72ある天使と一対一で善悪のペアにする考え方も知られていますが、これは後の時代に結びつけられた解釈で、もとは別々の伝統から来たものです。あまり「きれいに対応している」と決めつけず、「そう重ねて語られることもある」くらいに受け止めておくのがちょうどいいでしょう。

まとめ4行

  • ソロモン72柱とは、17世紀の魔術書『レメゲトン』の第一巻『ゴエティア』に記された、ソロモン王が使役したと伝わる72体の悪魔のこと。実在が確かめられた存在ではなく、昔の人の想像力が生んだ文化遺産として読むのがコツ
  • 一体ずつに王・公爵・騎士などの位階と、率いる軍団の数、固有の姿と能力が細かく設定されている。この記事では第1柱から第72柱まで全員を並べたので、お気に入りの一体を探してみてほしい
  • 「全員が邪悪な悪役」は誤解で、学問や芸術を教え、宝のありかや未来を示してくれる“知識の番人”のような悪魔がたくさんいる。序列の番号も強さ順ではない
  • 女神転生・ペルソナ・メギド72・フェイト/グランドオーダー・鉄血のオルフェンズなど、ゲームやアニメで大活躍。豊富な数と凝った設定が、創作にとって最高の素材になっている